吾輩はニャーである。名前はまだ無い。

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「行ってきまーす!」 涼香殿の声で吾輩は目を覚ます。と、そこで涼香殿があ、という顔をしたのが見えた。 「……いつの間に入っちゃったんだろ。でも時間ないし、早く行かないと」 涼香殿は走っているのかがたがたと揺れる。 うにゃあああ、吾輩は鞄の中をころころ転がった。目が、回る……。どーん、と強い衝撃が吾輩を襲う。目が回っていた吾輩は一瞬受け身を取るのが遅れる。にゃっ、と叫んで涼香殿に手を伸ばすが、またしてもふわふわの吾輩の手が滑る。来世はふわふわの毛並みは要らんなあ、と呑気に思いながら吾輩はまたしても背中から落ちていったのだった。 「……んだ、これ。あ、」 また、落ちたな、こいつ。竹本はため息をついて見覚えのあるそのぬいぐるみを拾い上げた。
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