恋の奴隷。

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「松山…骨董品、店?」 時代を感じる色の看板に書かれた文字を読み、純一郎はそれを見上げた。見るからに年期の入った木造建築。屋根瓦の重みに若干傾きかけているのか、つられて純一郎の首も傾く。そのガラスの引き戸を開けるガラリという音がした。 「今、帰った」 おチビちゃんだ。その言葉遣いに純一郎も突っ込まずにはいられない。 「おいおい、お前はどこの旦那様だよ」 「あ? 入るのか、入らないのかはっきりしろ」 「…っっか~、可愛くねぇ!」 純一郎は遠慮なくはっきり声に出して言ったがおチビちゃんはさっさと奥ヘ入って行く。その背中のふてぶてしさに、純一郎の顔はへのへのもへ字のようになる。おチビちゃんは一切振り返らなかった。純一郎がついて来ようが来まいがまるで関心がないと言っている。それが純一郎には面白くなかった。 いつまでもこうしているわけにもいかず、純一郎はキョロキョロ周りを見渡すと、おチビちゃんの後を追いその空間へと足を踏み入れた。 松山骨董品店へとーー…
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