5人が本棚に入れています
本棚に追加
/91ページ
そんな純一郎に風花はにやりと笑う。それから純一郎の方へ体を向けて座り直すと、落ち込んでがっくし肩を震わせている彼に、
「だからさ、」
と風花が言いかけた。
ガッ!!!
「せめて最後にもう一度っ! 彼女に会うまでは諦めきれんっ!」
机に右足をかけてそう拳を突き上げると、
「想いはめぐる、犯人は現場に戻る!」
驚いてイスから落ちかけている風花を見たと思ったら、
「俺は愛の狩人なのだからっ!」
と、誰も呼んではいないその恥ずかしい呼び名を堂々と叫びながら、教室を飛び出して行った。
「あ、ちょ、、」
呆然とした風花をその場に残して。
「…っもう!」
風花はイスから立ち上がり、行ってしまった純一郎に向かって一言。
「鈍一郎なんだからっ!」
その可愛らしい頬を赤く染めながら叫んだ。
そう、恋多き男に恋をしてしまった女ほど、可愛らしいものはない。
最初のコメントを投稿しよう!