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いつものように呼びかけに答えて、2人一緒に下校する。
曲がる道は幼馴染みを誘って、繰り返す前と同じ左を選ぶ。
左を選んだのは一番タイミングが分かりやすいのと、初めてという単なる感傷からだ。
もしかすると、今からやろうとしている全くの見当違いで、自分は幼馴染みと一緒に死ぬのかもしれない。客観的に見れば無駄死に見えるが、自分としてはそれで構わない。いい加減疲れてきていた。これでも幼馴染みを救えないのなら、せめて一緒に死のう。
それが自分に残された唯一出来ることなんだから。
そんなことを考えているうちに、あの日幼馴染みが死んだ通りへと出てきた。
右側からは、覚えのある車とそれに乗った運転手が徐々に近づいてくる。
時計を確認する。18時29分44秒。
少しだけ早いが、幼馴染みの身に何かが起こる前に行ってしまおう。
勢いをつけて車道に自分から飛び出す。
慌てた車のブレーキ音が聞こえてくるがもう間に合わない。間に合うはずがない。
そして、内臓を押し潰すような衝撃が襲いかかってくる。
衝撃で宙を舞いながらぼんやりと、幼馴染みはこんな痛みの中で死んでいたのかと思う。
そして、ベシャリと果実が地に落ちて潰れるように地面に叩きつけられる。
運転手がパニックに陥りながら出てくるが、そんなことはどうでも良かった。
薄目で幼馴染みを見る。幼馴染みは呆然としながらも生きて立っていた。
最後の力を振り絞り腕時計で時刻を確認する。
時計は―――18時30分丁度を指して壊れていた。
叫ぶ気力もでないので、心の中で歓喜の声を上げる。
18時30分で針が止まった時計は、幼馴染みがこの時を迎えてもなお生きていることを示す。
つまり、幼馴染みが死ぬという運命は変わったんだ!
その事実を実感すると同時にまぶたが急に重くなる。
安心して気が…抜けたのかもしれない。でも……何も問題は…ないだろう。
だって……幼馴染みは…死んでいない…生きている…それに。
自分は……運命に…勝つことが…できたんだか…ら―――――
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