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そのことに怒るよりも先に、幼馴染みと過ごしてきた時間の濃さに驚く。
過去を思い出したことで、失うわけにはいかないと思いが強くなり、改めて決意を固める。
そして訪れる運命の分かれ道。
ここを左に曲がればあの時の繰り返し、右に曲がれば幼馴染みのいる未来だ。
自然と呼吸が乱れる。
大丈夫、今日は早く帰りたいと言えば遠回りになる左は選ばないはずだ。
そう、何度も自分に言い聞かせながら右に行こうと口を開こうとする。
だが。
幼馴染みは特に悩む様子もなく右側に進んでいった。
その事に思わず、拍子抜けして足を止めてしまう。
そんな自分に幼馴染みは左に行くのか、と声をかけてくるので慌てて首を横に振る。
きっと、あの時幼馴染みが左に向かったのはただの気まぐれだったんだろう。
今回はお互いの過去話に夢中になっていたので、無意識に右を選んだのかもしれない。
そうだ。何も問題はない。これで運命は変えられたんだ。
1人でそう納得して安堵の息を吐く。
そして、運命が変わった道を2人並んで歩き出す。
これでもう、幼馴染みが居ない空っぽな時間に涙を流すこともない。
そう、完全に油断していた時だった。
―――幼馴染みに向かって車が突っ込んできた。
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