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グラウンドが見える。下校を告げる放送も聞こえる。
何とか、またあの日に戻ってくることに成功したみたいだ。
おーい、と聞きなれた声がまた鼓膜を打つ。
今度こそ運命を変えてみせる。
絶対に幼馴染みを死なせはしない。
もう一度強く覚悟を決めて、何でもないように装いながら幼馴染みの方に振り返る。
そして、何でもない会話を行いながら全力で頭を回す。
二度の死はいずれも交通事故によるもの。
それなら、車が通ることのない道を行けばいい。
すぐに答えを出し、今度は車が通ることのない道を帰る。
これならば幼馴染みが車にはねられることはない。
18時30分まで後5秒。辺りを見回してみるが、車どころか人の姿もない。
工事現場ではあるが、今は時間のためか作業している人も居ない。
変わる。運命が変わるのだと確信し、18時30分丁度を迎えた瞬間。
幼馴染みの頭上に巨大な鉄骨が落ちてきた。
グチャリ、と真っ赤なザクロが潰れるように幼馴染みの姿が歪む。
見なくても分かる。即死だ。
体が自分の物ではないかのように震える。
それは幼馴染みが死んだせいじゃない。
運命が何が何でも幼馴染みを殺そうとしているように感じられたからだ。
だって、おかしいだろう。工事業者は普通は鉄骨が落ちてくるようなミスはしない。
安全管理は徹底されている。しかも人も居ない。だというのに、幼馴染みは死んだ。
これを運命が幼馴染みを殺そうとしていると言わずに、何と言えばいいのだろうか。
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