第13話 レンタル主人公

7/7
前へ
/60ページ
次へ
「530、529.528,527……498、497、496、495……450、449、448……」 「机に(かじ)り付いて何やってるの?」 何時の間にか、鮎昆布(あゆこぶ)牛乳(みるく)の手元を覗き込んでいた。 「昨日の増えたページ消してるの。 指が疲れた~ビリビリする~」 放り投げたスマホを鮎昆布(あゆこぶ)がキャッチする。 「作品ごと消せばいいのに」 「へ?そんなこと出来るの?」 鮎昆布(あゆこぶ)は立ったままボタンをポチッとな……。 消えた。 今までの苦労はなんだったんだろう? 牛乳(みるく)は栗色の瞳をじっと見上げる。 「私さぁ、ズルだった。 私の作品なんて誰も見てくれないから……。 今って、なんでもレンタルできるよね。 人気キャラ借りて主人公にすれば皆が見てくれるって思った。 でも小説の主人公だけはレンタルしちゃいけないよ。 こーゆーの、ニットを追う者は(ふんどし)も得ず……て言うんだよね」 寂しそうに笑う。 「ちょっと違う」 鮎昆布(あゆこぶ)が即刻、切り捨てる。 「ああ……転んだ先の(ふんどし)だっけ?隣の(ふんどし)は赤い?」 「もっと違う」 「赤じゃなかった? 事実は(ふんどし)よりも()なり? 暖簾(のれん)(ふんどし)?」 「一度、(ふんどし)から離れたら?」 「だーかーらー、分かったの。 あゆこーんちゃんが作ったキャラはあゆこーんちゃんが動かすから面白いんだよ。 乱丸はあゆこーんちゃんしか動かせない。 私が勝手に動かして設定やイメージ変えたら誰の作品か分からなくなっちゃう。 ましてや、ケモ耳生やして狼にするとか絶対やっちゃいけない」 「え……そんなつもりだったの?」 「いやいやいや、 まさか~あっはっは!」 だらだらと冷や汗を流す牛乳(みるく)。 「怪しい……」 栗色の瞳が見下ろしている。 「私はぁー 乱丸に負けない私だけのキャラを作って見せる」 牛乳(みるく)は乱丸のように拳を高く突き上げた。 「そう…… 頑張ってね、みるく姉ちゃん」 鮎昆布(あゆこぶ)がにっこり笑った。 長い髪がふわりと舞う。 「うん。ありがとう、あゆこーんちゃん」 風に揺れる栗色の髪はルンルン姫と重なって見えた。 牛乳(みるく)は、そっと手を伸ばす。 「綺麗…… 栗色の髪、この手で風に靡かせてみたい……。 ねえ……あゆこーんちゃん 私、今度はルンルン姫を主人公にして小説書きたい。 ルンルン姫レンタルする。 貸して~!」 「はあ?(した)()も……」 「へ?(した)のネタ……? 他人の(ふんどし)相撲(すもう)を取る~!」 「微妙・・・…てか もうお姉ちゃんて呼んであげないから」 「えー?もっぺん呼んでよ~ あゆこーんぶちゃん~!」 「もう!みるくちゃんたら」 戸々夏(ここなつ)家は平和です。 了 18c4ffd5-f624-436a-b84b-54b0a0c37620 皆さん最後まで応援頂きありがとうございました!感謝です!
/60ページ

最初のコメントを投稿しよう!

43人が本棚に入れています
本棚に追加