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「530、529.528,527……498、497、496、495……450、449、448……」
「机に齧り付いて何やってるの?」
何時の間にか、鮎昆布が牛乳の手元を覗き込んでいた。
「昨日の増えたページ消してるの。
指が疲れた~ビリビリする~」
放り投げたスマホを鮎昆布がキャッチする。
「作品ごと消せばいいのに」
「へ?そんなこと出来るの?」
鮎昆布は立ったままボタンをポチッとな……。
消えた。
今までの苦労はなんだったんだろう?
牛乳は栗色の瞳をじっと見上げる。
「私さぁ、ズルだった。
私の作品なんて誰も見てくれないから……。
今って、なんでもレンタルできるよね。
人気キャラ借りて主人公にすれば皆が見てくれるって思った。
でも小説の主人公だけはレンタルしちゃいけないよ。
こーゆーの、ニットを追う者は褌も得ず……て言うんだよね」
寂しそうに笑う。
「ちょっと違う」
鮎昆布が即刻、切り捨てる。
「ああ……転んだ先の褌だっけ?隣の褌は赤い?」
「もっと違う」
「赤じゃなかった?
事実は褌よりも黄なり?
暖簾に褌?」
「一度、褌から離れたら?」
「だーかーらー、分かったの。
あゆこーんちゃんが作ったキャラはあゆこーんちゃんが動かすから面白いんだよ。
乱丸はあゆこーんちゃんしか動かせない。
私が勝手に動かして設定やイメージ変えたら誰の作品か分からなくなっちゃう。
ましてや、ケモ耳生やして狼にするとか絶対やっちゃいけない」
「え……そんなつもりだったの?」
「いやいやいや、
まさか~あっはっは!」
だらだらと冷や汗を流す牛乳。
「怪しい……」
栗色の瞳が見下ろしている。
「私はぁー
乱丸に負けない私だけのキャラを作って見せる」
牛乳は乱丸のように拳を高く突き上げた。
「そう……
頑張ってね、みるく姉ちゃん」
鮎昆布がにっこり笑った。
長い髪がふわりと舞う。
「うん。ありがとう、あゆこーんちゃん」
風に揺れる栗色の髪はルンルン姫と重なって見えた。
牛乳は、そっと手を伸ばす。
「綺麗……
栗色の髪、この手で風に靡かせてみたい……。
ねえ……あゆこーんちゃん
私、今度はルンルン姫を主人公にして小説書きたい。
ルンルン姫レンタルする。
貸して~!」
「はあ?舌の根も……」
「へ?下のネタ……?
他人の褌で相撲を取る~!」
「微妙・・・…てか
もうお姉ちゃんて呼んであげないから」
「えー?もっぺん呼んでよ~
あゆこーんぶちゃん~!」
「もう!みるくちゃんたら」
戸々夏家は平和です。
了
皆さん最後まで応援頂きありがとうございました!感謝です!
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