第六章 Town

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 「ようし、じゃあどこに行こうか?美味いもん食べてから?」  マニャックはくるりと回りながらガロに聞いた。  「美味いもの…か…。でもそれじゃ一発で金が無くなるから、食わないで遠くの町まで歩いていこうと思う。」  「そんなにお金ケチらなくてもいいんじゃない?電車とかでさ、一気にその街まで行っちゃった方が早いと思うけど…。」  「…まぁ何となく、節約志向で最期までやってみるよ。いつ金が消えるか分かんないし…。」  「そうか。…じゃあガロについて行くから、当分よろしく。」  「…。」  マニャックがいるということは、既に自分は死ぬ意識を固めている…と考えていいと認識した。いや、もう頭で考えるのも散々やった、もう意識の赴くままに動いていいだろう…。  ガロは通りに向かって歩き出した。マニャックはガロの周りをぐるぐると回りながら、鼻歌を刻んでいた。これがいい人生と言えるかはわからん。ただ、今自分が進みたい道はこうなんだろう…。彼はそう思いながら足を動かした。通りまでまた時間がかかるんだ、これが…。  ちなみにそのあと家に帰ってきた母は、掃除中にガロの置手紙を発見した。全文を読んで、彼女は冷静にその事実を受け入れた。別に息子をクズだとは思わなった。ただ、悩んでいるんだなとは思ったようだ。そして、ただただ無事に帰ってくることを祈った。夫や弟たちには、正直に話した。  この母親は、息子の行動を認めてやるだけの器をもっていた。そのことが、全ての母親の中でどういう評価になるかはわからないが…少なくともガロという人間には快いものとなった。彼女が、自分の思いつかないような行動をする息子娘を断固として認めず拒否し、矯正しようとする者だったら、ガロはまた違う人生を歩むことになっていただろう。その点では幸運と言える…。  世の中には生んだ子供を殺してしまう親もいる。捨てる者も大勢いる。世界はそんな身勝手な、自分のことしか考えない大人の都合にいつも振り回されている。それを監視する機関が早急に必要である。そうでなければ、世界はさらに独裁者の思うがままにされていくだろう。子供たちも、貧困と不安から逃れることはできないだろう…。人生はいい親のところに生まれるかどうかでかなり変わると思う。駄目なものは駄目だと言ってくれる人がいないと、人は獣と化す。
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