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心が落ち着いていく。ランバートは微笑んで、ゆっくりと近づいていった。
「寝付けませんか?」
声をかければ黒水晶の瞳が苦笑を返してくる。自然と隣りに並び、同じく空を見上げた。
「久しぶりだな、こういうのも」
「いつも会えば抱き合ってばかりですから」
「盛りのついた猫の様に言うな」
「違いますか?」
「……」
なんとも言えない顔で睨むファウストを見ると、思わず笑ってしまう。そうするとますます眉根が寄るのだ。
「…大丈夫ですよ」
「……あぁ」
何を不安に思っているのかは、分かっている。チェスターを見舞って、話を聞いた。正直こうまで状況が悪いとは思わなかった。
けれど、だからといって俯いて何になる。既に始まっているのだから、行くところまで行かないと終われないのだ。
「ランバート」
「置いて行ったら恨みますよ」
先制で言えば、ファウストは面食らった顔をして笑う。そしてそっと、髪を撫でて引き寄せた。
「悪い、手放せなくて」
「それでいいんです。側にいます」
「……危険を考えれば、砦を守れと言いたいが」
「怒るぞ」
「分かっている」
こんな事を言いながらも、その心はもう共に戦う事をほのめかせている。だから素直に凭りかかった。
「何があっても、側にいるから」
「守ってみせる」
「俺も、守ってみせる」
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