傀儡(キフラス)

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「あいつらはそんな卑怯をしない!」  腰の剣に手をかけながら一歩前に出る。闘気の中に殺気が混じり、今すぐにでも斬りかかろうという気配がする。  ブレアも流石に一歩引いた。だがルースだけは座ったまま余裕だった。 「随分騎士団を買っているのですね」 「当然だ。奴等とこれまで何度もぶつかった。バカがつくほど真面目でいっそ清々しいやつらだ。大人数で二人を囲い込み、まして殺すような事はしない!」  ベルーニ方面から来た人々に尋ね歩いて、話を聞いて、確信した。騎士団はこんな事をしない。西の奴等は確かに帝国を嫌っているが、それでも『卑怯者』とは言わない。今の団長になって、策を弄しても決して弱い者を嬲るような事はしなかったのだ。 「…仕方がありませんね」 「ルースっ」 「えぇ、私が命じましたよ」  目の前の男は、どうしてこんなに綺麗に笑うのか。手を組んだ、しかもまだ若い二人をはめて、殺しておいて。  憎しみが溢れる。キルヒアイスに対するものに近い憎しみが体中から滲み出るようだ。 「仕方がないじゃありませんか。貴方の腰が重いから、起爆剤になればと思ったのですよ」 「なんだと!」     
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