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「今動かなければ騎士団はこちらへの警戒網を完全に終えてしまいます。裏をかき、こちらから仕掛けるには今からでも遅いくらいです。奴等はベルーニに兵糧や兵を集め始めました。本格的に、私達と戦おうとしているのですよ」
「だからって!」
「貴方が彼らを殺したのですよ」
こいつは、疫病神か死神か。綺麗過ぎる笑みを浮かべたルースが、チラリと隣のブレアを見る。頷いた男は頷き、隠すように背を向けているソファーへと近づいていく。
不自然だと思っていた。ソファーの位置が違ったから。
「さて、キフラス。貴方に質問です。私に協力して今すぐ兵を動かすのか。それとも、たった一人残った仲間すら失うのか」
「!」
ブレアが引き立て、首にナイフを突きつけた相手。虚ろな目、力の入らないらしい様子は知らない。彼はいつも姿勢正しく歩き、誰よりも仲間を思って駆け回っていたのに。
「レーティスに何をした!」
「まぁ、少し。北の薬は、本当によく効きますよね」
「なっ!」
人を傀儡とする北の薬。溺れればそればかりを求め、元の人格は残らないと言う。虚ろな目、虚脱感。薬が切れると途端に倦怠感が強くなり、幻覚や幻聴も起こすと聞いた。
「彼、綺麗なお人形になりそうですよね。いいんですよ? 血の気の多い男達の中に、薬に漬けて放り込んでも。今で十分色気がありますから、きっと…」
「止めろ!」
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