404人が本棚に入れています
本棚に追加
/105ページ
そんな事、絶対にさせない。幼馴染みで、共に今まで戦ってきたんだ。本当は誰よりも優しく、争う事に心を痛める奴なんだ。そんな……どうしてここまで落ちてきたんだ。
「キフ……ラス」
「レーティスっ」
「だめ…です。お願い、私は……」
辛そうにしながら、泣きそうに言う彼を見て、どうして捨てられる。今はもう、二人だけだ。他の仲間も失われてしまった。主も……生きているのか分からない。
キフラスはルースを睨み付ける。だが、剣から手を離した。それだけで満足そうに、綺麗な口元に三日月のような笑みを浮かべた。
「賢明な方です」
「これ以上レーティスに薬を使ったら…」
「分かっていますよ」
満足そうな極上の笑みを浮かべ、ルースは早速地図を出す。そして、キフラスへと当然の様に命じた。
「兵糧の道、行軍の道を分断します。今すぐ兵を配備してください。ベルーニから港へと続く道筋と、ベルーニからここ、ジュゼット領リリーまでの道に兵を伏しておいてください。騎士団の行軍を分断しますよ」
「お前はどうする」
「私達はこの屋敷で、客人を招いて見ています。上手く騎士団を叩ければ、貴方達を解放しましょう」
大軍に、大軍をぶつけようというのか。行軍や退路を断つような奇襲はほぼ、生きて帰る事を念頭に置かないものだ。
最初のコメントを投稿しよう!