宣戦布告(リオガン)

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宣戦布告(リオガン)

「リオガン、見てみてあっち! リスとかいるよ! 王都近郊って、案外自然多いよね!」  窓からの景色を身を少し乗り出すようにして見ているハクインは子供みたいで可愛い。窓の近くにある枝にリスが寄ってきたのを見つけて嬉しそうにしている。  車椅子に座ったままその様子を見ていたリオガンは笑っている。とても楽しそうに笑うハクインが、やっぱり好きだ。  リオガンの傷が回復し、車椅子を条件に移動が可能となって、王都近郊のこの場所にきた。その際、とても面白い経験をした。 「それにしてもさ、まさか葬送馬車に乗るとは思わなかったよね。しかも寝る場所が棺桶の中なんて、縁起でもない」 「? 面白かった」 「リオガン……」  少しむくれたように言うハクインとは違い、リオガンはこの経験が楽しかった。  ルース側に感づかれると困る。だから葬儀屋の黒塗り馬車に棺桶を乗せ、二人はそれの中に入って馬車へ。勿論棺桶の中には身を守る剣があった。そうして、ここまで来たのである。 「いい気分しないじゃん」 「でも、生きてる。死んで入るんじゃない、から」  入っていてもおかしくはなかった。覚悟したんだ。あのまま、もう出会えない事を。     
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