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リオガンの前に立ったオスカルが苦笑する。目を合わせるのはバツが悪いけれど、反らす事もいけない気がする。責められて、怒られて、殴られたりしても文句は言えない。それ以上の事をしてしまったんだから。
「やぁ、改めて会うのは初めてだね。あの時はちょっと痛かった」
「あ、の……」
「リオガンは悪くない! あれは俺の指示で!」
ハクインが焦った様に言って前に出ようとする。庇おうとしている。でも、それよりも前にオスカルの手がリオガンの頭に触れて……
ワシワシワシワシワシ!
「!」
グチャグチャにするように髪をかき混ぜられ、硬い銀の髪があっちこっちに跳ねた。呆然としていると、目の前のオスカルはおかしそうに体をくの字にして笑っていた。
この人、謎だ。
「おっかしぃ!」
「オスカル!」
「いいじゃん、これで帳消しにしてあげる。正直、あまり怒る気も無かったんだけど反省待ちの犬みたいな顔してるんだもん」
怒って、いないの?
乱れた髪を撫でて整えて、頼りなく見上げた。それに気付いたオスカルが、ぽんぽんと頭を撫でる。
「過ぎた事だしね。それに、主に仕える人間として、君たちの不幸は同情する。僕もきっと同じ状況に立たされたら、苦しむと思う」
優しい眼差しだと思った。温かい心が伝わるような笑顔だった。こういう優しさに、久しぶりに触れた気がした。
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