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第二章 僕の夏
返事を出した次の日の朝に、また返事が返ってきた。僕はウキウキしてベッドに寝ているまま、携帯を起動してメールを確認する。メールボックスの一番上のメールを、葵くんの名前を確認して開いた。
明日午後二時に、僕の家の近所の喫茶店で会おう、というものだった。
明日はもともと休みだったので、すぐさま大丈夫だと返信する。このご時世にわざわざ手紙というのも億劫だと思い、僕のほうからメールに切り替えたのだが、葵くんはどうもメールに不慣れなようで、誤字脱字がちらほらと目立っている。まぁ、ずっと入院していたわけだし、恐らく携帯は最近になって手に入れたものなのだろう。
いろいろと話したいこともあるけれど、全部明日にとっておくことにして、僕はそのまま携帯を机に置いて、朝ご飯ができたと伝える母の声のほうへと、リビングへ急いだ。
おいしそうなにおいを追いかけて階段を下りれば、外したエプロンを手に持った母がいた。僕は、興奮気味に明日のことを伝える。
「へぇ、葵くんが。楽しんでらっしゃい」
そういって、母はうれしそうに笑った。
僕は母と一緒にリビングに向かって、母が椅子に座るのを待ってから母と向かい合う席に座り、母と一緒に「いただきます」と言ってから、机の上に奇麗に配膳されている朝ご飯の目玉焼きに箸を伸ばした。
父は出張中で不在。僕は葵くんと会う。となると、母は明日、家に一人でいることになる。母は明日何をするのだろうと目玉焼きにしょうゆをかけながら考えていると、母もちょうど同じことを考えていたらしく、「明日はのびのびできそうね」と、僕を見て笑う。
相変わらず笑顔の絶えない人だなと、目玉焼きの白身をほおばりながら思った。きっと僕も、こんな奥さんを持てたら幸せなのだろう。
「母さん、明日は何するの」
少し気になって聞いてみると、母さんは
「そうねぇ、どうしようかしら。ちょっと、羽でも伸ばそうかな」
と、昨日と同じ天気の梅雨明けの空を窓の外に眺めながら、また笑った。
僕は目玉焼きの黄身にかぶりついて、ご飯をかきこむ。
そろそろ準備をしないといけない時間だから、目玉焼きの残りとご飯を口の中にかきこんで、まだ朝ご飯を食べている母を尻目に、自分の食器を先ほどかきこんだご飯を咀嚼しながら片付けて、ようやくご飯を飲み込んだ後に「ごちそうさま」とだけ告げて、朝の用意を急いだ。
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