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光
雨が降ると、憂鬱な気分になる。
ただでさえごちゃごちゃとして狭苦しい街に傘をさした人があふれ、余計に窮屈に感じる。
特に、夏の雨は最悪だ。アスファルトにしみ込んだ雨は、スチームサウナみたいにねばつく熱を発し、土臭いにおいを充満させる。
くらくらするような熱に、視界も曇っていく。
仕事を始めて、もう五年になる。
もう、なのかまだ、なのかはわからないけれど、少なくとも僕は五年という年月に見合う成長はできていないだろうと思う。朝礼の時に、ここにいる人たちはもうベテランとリーダーが言っていて、そうなのかと他人事のように考えていた。
昔から、何かに夢中になるということができない人間だった。
誰かの真似事で何かを好きになる、中途半端な人間。特異なものに憧れるくせに、憧れるだけで何もしない人間。
そうして、なんとなくで生きてきて、僕はいまこうして就職して働いている。
バスを待つ人々も、揺れるバスも、ごちゃごちゃした人波も、晴れた日は気にならない。
でも、雨が降ると、まるでそれが自分の心を映す鏡のように機能して、僕の中の憂鬱をあぶりだしてしまう。
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