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「もう刺さないよ。欲しいけどね」
ジェレミの為に薄暗くともされた部屋の光の中、彼の笑みが見えた。マイペースなジェレミの躁病具合は前ほどではないが通常運転である。だが、流石に慣れている。クロエはリビングから聞こえるテレビの音とジェレミの首筋に滴る汗を見逃さなかった。
「あんた、また裸眼でテレビ見たでしょ」
「まぁね、居た場所がキッチンで良かった」
ジェレミは素っ気なく返事をした。
「子供じゃないんだから自分の体質考えたらどうなの?どうせさっきパニックになったんでしょ」
クロエは強い口調で言った。
「解ってるよそれくらい。でも裸眼で観たくなるじゃん。【普通の人】みたいに」
「だとしても私の眼を欲しがるのは辞めた方が良い。あんたの躁病と掛け合わせたらどうなるものか…海外行って眼の色素手術受けたらどうなの」
「悪くないけどちょっとなー行くのがめんどくさい」
一生、良くならないわとクロエは溜息をつきながらリビングへ行き、テレビを消した。
「父さんは?」
「母さんなら寝てるけどもうそろそろ夕食だから起きるよ」
写真の現像や編集、売り込みを一人でこなしている親は相当疲れがたまっている様だ。
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