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エデナ・ティアーズは混乱していた。祓魔師の彼は勤勉と周囲にも高評価で着々と出世の階段を駆け上がるいわゆるエリートである。
彼は今、ある意味人生最大のピンチとも言うべきことを上司から告げられたのだ。
「エデナ君、サタンとユニットを組んでくれ」
ニコニコ笑顔の上司の顔をぶっ飛ばしても文句は言われないはずだ、と本気で思った。
サタン、それは祓魔師の敵たる悪魔の最上位である。その力は尋常でなく、昔異世界からの勇者と呼ばれる存在と祓魔師協会の最上位の力を持つ乙女たる聖女(ちなみに男性の場合聖男と呼ばれる)の2人でも討伐は叶わなかったとか。
なんでサタンと、ていうかユニットって何。
頭の中で巡る疑問。エリートとは言えまだまだ下っ端。上司の命にはYESといわなければならない。哀れな社畜である。
道理で俺みたいな下っ端が組織のトップたる聖女サマに呼び出されるわけだ、と未だ混乱する頭の片隅で思っていた。
それとほぼ同時刻、次元すら隔てたそこである者もまた同様に混乱していた。
「祓魔師とユニットを組むことが決定しました、閣下」
「…誰と、誰?」
「閣下と祓魔師にございます」
サタンである。
おかしいな、俺のほうが立場上なはずなのになんでだろう。部下に命令されるって。
てかなんで祓魔師と、そもそもユニットって?
哀れな社畜はここにもいる。全くの別種であるが。
「ねえねえ、俺さ。そんな仕事の依頼出してないよね?いつのまに」
「閣下はその頃駆け出しの地下アイドル『ホホエミKISS』のライブに行かれてたではありませんか。つーしょっとちぇきとやらもわたくしに見せつけて来たことをお忘れですか?」
上司は、時に部下に逆らえない。
サキュバスは見る者全てを魅了する蠱惑の笑みを浮かべるというが、ここにいるサキュバスが浮かべているのは万人の背筋を凍らす般若の笑みじゃないか。サタンは悪魔大辞典の改稿を固く決意した。
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