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唐突にふたりの間に落ちた沈黙に今度は郁が小首を傾げ、やがて小さく口の端を持ち上げた。
「相合傘は、恥ずかしい?」
「えっあの……」
亜衣香の頬がぱあっと薔薇色に染まった。
郁と相合傘をする。相合傘で登校する。
通学路を一緒に歩ける上にそんなことまで叶ってしまっていいのだろうか。
……夢を、見てるのではないかしら。
鞄の持ち手をぎゅっと握り締める。そのまま胸の前に持ってきて抱え込むと、亜衣香は音がしそうな勢いで首をぶんぶん横に振った。
「……はっ恥ずかしくない!」
郁が目を細める。昔も今もずっと変わらない、亜衣香の大好きな笑顔だ。
彼は亜衣香の方に一歩踏み出し、傘を軽く差し掛けた。
隣に作られた明らかなスペースに少女は軽い足取りでぴょんと入った。
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