第1章

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やあ親友。 今から帰るのか? ついていっていいか? ちょっと君に聞いてほしい計画があるんだ。 よし、では歩こうか。何から話せばいいか、……そうだな、シェイクスピアの三大悲劇を知っているだろうか。 ……いやちょっと待て、熱をはかろうとするな。どうせならおでこをあてろ。 というか、それ脇の下にはさんで使うやつじゃないか? 今、くわえさせようしなかったか? 気のせい? ならいいんだ。 私が言いたかったのはロミオとジュリエットだ。 知ってるか? あいつら14歳と13歳にしてお互いに一目ぼれして翌日の夜には18禁なマネした挙句に初対面から五日と経たずに死ぬんだぞ。 最後に死ぬところまではともかく、一目ぼれした次の日の夜にはモノにしてますなんて通販サイトでも別料金が必要なサービスじゃないか。 イケメンにゲトられることを目標にしてたまには文学にひたってみるかなんて手に取った結果が、プライム会員感覚でイケメンと結ばれたジュリエットの物語をまざまざと見せ付けられた私がどれほど嫉妬を覚えたことだろうか。 これは死と恋愛をモチーフにした悲劇ではあるものの、くっつくまでの期間にお互いは死んでいない。 にも関わらず、最後の悲劇の印象が強すぎて、死に向かうお互いを思いあうというイメージがつきまとっているんだ。 だが、これは一理あると思う。 今日は君にそんな話を聞いて欲しい。 私を含め、思春期の妄想が行き着くところは白いウェディングチャペルで白いドレスを着てブーケを持つ一瞬であることは疑いの余地はないことと思う。 もちろん正確性を期して建前上はと言ったが、では裏の意味はと私に聞くようなマネはするなよ。ロミオかジュリエットにでも聞いてくれ。 しかしながら、そんなハッピーエンドではない状況、そう少女漫画によく出てくる悲劇に焦がれる瞬間というのも否定はできないのだ。 今日は君に「死を前提とした恋愛物語」というヤツの根底について意見を聞きたくてね。 そう、それというのも恋愛譚において、死を前提にしたホレたハレたのストーリーは古今東西、枚挙に暇がない。 そもそもが我々生物の本能が全てDNAの保存にあると考えれば、人間の恋愛なんて何もかもが無意味になるので思春期の乙女としては全力で否定したいところだが、うるさいだまれ聞きたくないと否定しまうのもまた勿体無い。
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