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「なあ、しつこいようだけど……本当に大丈夫なのか?」
何が?と響野が応じると、顔のすぐ横で小さくため息が聞こえた。
「何がって、今のこの状況全部だよ。目は見えなくなってるし」
水元が手にしている薬局のビニール袋が、響野のつかまっている腕とは反対側でガサガサと音をたてる。
「……向精神薬まで処方されてるじゃないか」
薬をもらうときに薬剤師から説明を受けたのだろう。水元の懸念を響野は理解した。
「言っておくけど、うつ病とかじゃないぞ。心療内科で眠れているかどうかを聞かれて、そうでもないって話したら、睡眠薬の軽いやつを出しておくと言われたんだ」
来院して最初に響野が診察を受けたのは眼科だった。その後は内科と脳外科を経由して、最終的には心療内科へ行くよう指示を受けた。ちょっとした院内ツアーだ。無論、できれば二度と参加したくないが。
「原因は寝不足ってこと?」
水元の声には不信がにじんでいる。
「過労だとさ。他にも色々調べられたけど、眼機能とか血液検査とかCTとかには異常がなかった」
本当は血液検査の段階で軽い貧血と脱水症状が見つかり、点滴を受けたのだが、そのことは黙っておく。
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