511人が本棚に入れています
本棚に追加
/433ページ
「目の調子はどう?」
「見えないけど、明るいのがわかる。昨日は真っ暗だったからな」
「そうか、多少は良くなってきてるのかな」
相手は自問するようにつぶやいた。
「そっちは眠れたか?」と響野はたずねる。
「おかげ様で。そこ、寝心地いいね」
見えてはいないが、水元がリビングに置いてあるソファを指したことが直感的にわかった。大人の男が足を伸ばして眠れるサイズの大型のソファだ。
本当は一階の奥にある客間を使うよう勧めたのだが、一晩だからここでいいと固辞された。
「で、八時くらいからアイツが動き出したから、一緒に起きた」
水元は続ける。
アイツというのはたぶん、二人が会話をしているあいだにもリビング内を移動しているロボット掃除機のことだろう。サイズも駆動音もそこそこ大きいため、存在感がある。
「タイマーが平日設定のままだったんだな。起こして悪かった」
「全然。実物が動いてるところを初めて見たよ。意外と可愛いね」
水元の無邪気な感想に、小さく笑いがもれた。
* * * * *
最初のコメントを投稿しよう!