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『こらこら兄ちゃん、そんな危ない運転しちゃいけないよー。俺達が優しい口調で話してるうちに、路肩に停まってくれないかなー』
「停まるかよ!このまま逃げ切ってやる!」
警察官は銃を所持していることは、周知の事実だと思う。
しかし、発砲するにはそれ相応の理由が必要であって、行き過ぎた発砲は時に、犯罪者よりも攻め立てられることがある。
それならば、警察官は死んでも良いということなのかと問えば、それとこれとは話が別だと言われてしまうのだから、なんとも世知辛い世の中だったことだろう。
犯罪者といたちごっこをすることさえ出来ずにいる歯痒さといったら、目の前に極上ボディの女性がいるのに、見るだけでお触りはダメだと言われているようなものだ。
「それは違う気がする・・・」
「似たようなもんだろ。てか瑞希、もっと飛ばせよ。本当に逃げられちまうだろ」
ちょっと、いや、随分先の未来では、警察官の発砲に対しての認識は、寛容になったものだと思う。
逃げれば勝ち、などといった哀れな頭脳しか持ち合わせていない犯罪者共を、この手で容赦なく捕まえることができるのだから。
一般人を巻き込んでも良いのか、という質問に対して答えを出すとするならば、いた仕方ない、といったところか。
以前よりも大音量で鳴り響くようになったサイレンと、警察車両だけが取りつけられる抵抗の少ない特殊なタイヤ、そして道路幅も3倍以上に広げられたため、サイレンが近くで聞こえたらすぐに端によせて警察車両の邪魔をしない、というのが鉄則となった。
この邪魔をしない行為は警察車両だけではなく、緊急車両全般において用いられる罰則・罰金、そして刑罰さえも執行される重大な規則だ。
そして今この男2人が追っているのは、スピード違反の車。
違反車両を追跡するだけでなく、選挙カーも真っ青の大音量マイクで停まるよう指示を出すが、一向に聞く耳を持たない。
なので、こういう手段にも出るわけで。
「面白くなってきたじゃねえか・・・!!このままカーチェイスと行こうか!!!」
「あー、やばい。酔ってきた。俺どうすればいい?」
「とりあえず120キロ出せ」
運転席で顔を青くしている男と、助手席で楽しそうに笑っている男。
助手席の男は、何度も何度も声かけをしているのだが、違反車両は停まる気配がないため、距離を縮めて勝負をつけようとしているらしい。
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