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言われた通り、わたしは準備をしてから外に出て箱を開く。
パンッ! パンッ! パンッ!
開いた途端、箱から出てきた何かが跳ね上がって、バクチクみたいなすごい音を立ててズボボッと地面にめり込んだ。
わたしがポカーンとしていると、箱から更に黒い煙がモクモクと流れ出て来て空にフワフワ飛んでいく。
混乱してわけのわからない煙を吸ってしまって、ああせき込むなと思ったら全然そんなことはなくて、代わりに水気を含んだ湿った空気の香りがする。
わたしは直感的に、キチンと用意するよう張り紙にデッカく描いてあったカサを手に取り、黒い雲で既に真っ暗になっていた空に向かってパッと開く。
間一髪。わたしがカサを開いた瞬間、滝をそのまま移動させたような雨が降り注いだ。
雨は縦に一直線に流れたのでカサを差した私にはあまり当たらなかったけれど、勢いが過ぎて滝の内側に入り込んだようなものだったので、降ってる間もし誰かに話しかけられたとしても、周囲の水のせいでなんにも聞こえなかっただろうなと思う。
幸い雨はすぐに止んで、またチリチリ熱い太陽が青い空に顔を出す。
昼の日差しが降り注いだ瞬間、さっきのよくわからないものが地面にめり込んで行った辺りから小さな双葉がいっぱい、伸びてきた。
双葉は四葉になり、四葉を支える茎は成長期の男の子の時間を早回しするみたいにどんどん背を伸ばし、四葉が八葉になり、葉っぱは広く分厚くなってどんどん地上が遠く──。
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