1

4/11
前へ
/11ページ
次へ
「って、わたし乗っけて成長しないで──!!」    葉っぱはいつの間にか人を一人乗っけられるくらい大きく肉厚になっちゃって、ひまわりじゃなくてジャックと豆の木ですか? って聞きたくなるくらいぐんぐん空に向かって伸びていく。  たしかにひまわりって太陽を追いかけるみたいにぐるぐる頭を回しながら成長するらしいけど。そんなに太陽さんに憧れなくてもいいじゃないの! キャー!  なんて言ってる間にひまわりは太陽のところまで行くずっと手前で成長を止めた。あくまで太陽基準であって、二階建てのわたしのおうち数十個縦につなげたくらいの高さはあるけど!  ああ、我が家があんなに遠く……。ロッククライミングも未体験なわたしが地上までサンフラワー・クライミングなんかして無事でいられるかしら。  下手に動くよりはじっとしていたいところだけれど、この葉っぱ、人を一人乗っけられるといっても、いつまでも乗っけていられるほどの強度がないみたいなのよね。ほら、今もちょっとメリメリ言ってるでしょ。なんか心外な気がするけれど。  でもシキの顔をもう一度見る前にこんなお空に近いところで薄幸のミイラと化して干からびるわけにはいかない!  わたしはひまわりの葉っぱと茎に手をかける。そしてみごとに手を滑らせた!  アハハ、自分の貧弱な身体を舐めていたわ。わたしは地上に落下する。切羽詰まってるのに景色の動きはヒツジが草を食むくらいにゆるい。落ちるときの時間がゆっくりになるって本当なのね。   空に憧れるひまわりと真逆に地面に向かって咲く花ってきっと汚いんでしょうね。なんか色々臓物とか臓物とか血みどろブシャーで。  いーやー! そんな汚いお花にはなりたくない! わたしみたいな薄幸の少女ってものは、頭に美までつかなかったとしても、憧れるのは血花じゃなくて、ちょうどこのひまわりみたいな、窓から見える感じの花を見て「生まれ変わったらひまわりになりたい。ひまわりになってずっとずっと、この街を見守っていくの」とか切ない事言って彼氏とか彼氏とか彼氏とか彼氏の心を打たないといけないのよ!  死体で彼氏や家族にトラウマ残すとか薄幸の少女のやることじゃない──っ!!
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加