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「なにやってんだ。この貧弱ワラ娘が」
彼みたいというか、わたしはいつの間にか帰って来たらしいシキにお姫様抱っこされていた。キャーロマンティック!って言いたいところだけど。
シキはホウキの上にガニ股で踏ん張っているから浮かれるよりもすげえ……って気持ちが先行する。わたしと反対で肉弾派なだけあるな。魔法使いって非力なイメージがあるんだけど。
「なにやってるって、シキの箱開けたらひまわりの成長に巻き込まれて落下しかけてたんじゃない!」
「だから開けたらすぐに距離取れって張り紙に書いたろ。二枚目の」
「にまいめ? シキの顔のこと?」
「ち、違うわい!! ちょうどあの箱送る時紙が小さくて罫線ないやつしかなくてさ、字でっかく描きすぎたから二枚目に必要事項書いて貼ったんだよ。見てねえの?」
「気づきませんでした」
「おいっ! ……オレも悪かったけどよ、お前下手したら死んでたぞ」
「け、結果オーライ? シキ助けてくれたし?」
彼はわたしを抱えながら、水面を滑る白鳥の優雅さで地上へ降りていく。やっぱり踏ん張っててガニ股だけど。主にわたしのせいで。
「相変わらず軽いのな」
ホッ。重くなかった。
「でもすぐ重くしてやれるさ」
何その酷い発言。
「お前の病弱治す薬の材料がそろったからな」
「えっ、見つかったの。一年も帰って来なかったから難航してるのかと」
「何言ってんだ順調だったろ。『秋の虫の声を食べてしまうほど生命力の強いカエルの鳴き声』、『雪だるま族の汗』、『春に咲く花全種類から分けてもらった花びらで作った花吹雪』『天に届かんばかりに伸びるひまわり』。冬に贈った雪だるまはさ、事情話したら是非お前の話相手になりたい! って言うから本人を箱で送ったんだけど」
わたしに贈られてきた『手紙』達は、ただの便りじゃなかったのか。手に入れた薬の材料のおすそ分け。
「集めるのきつかったから、もしダメだった時ぬか喜びさせるのも嫌だなって思って言わなかったんだけどさ──でも今日は顔色良さそうだな」
「一番の特効薬が最高のタイミングで帰って来てくれたからね」
わたしは彼の健康的な赤い頬にキスをする。持ち前の肉体で踏ん張ってくれたけれど、あやうく彼はわたしを取り落とすところだった。
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