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 今でこそホウキで空を飛ぶくらいお手のものだが、昔のオレは申し訳程度の魔力はあったものの、地面スレスレにしか空を飛べなかった。  村に立ち寄った旅の魔法使いのじいさんに「この子はわずかながら魔力があるようだね」なんて言われて浮かれて、親が止めるのも効かずじいさんに頭を下げて魔法使いの修行を始めたはいいものの。  あの時のオレに、物語の天才魔法使いみたいな才能なんか欠片もなかった。じいさんはガキを軽くあしらう事もなく、誰でも最初はそんなもんさなんて励ましていたが。やっぱり魔力ってのは多い方が有利なもんで、ガキの頃のオレは地面から数ミリ浮いたり、じいさんのパイプに火をつけるだけで力尽きてた。  村の同い年のやつらにはずいぶんからかわれた。バカスレスレ、もしくは地面スレスレのシキなんて嬉しくもない二つ名をつけられたっけな。鮮やかに鳥のように飛ぶから「スカイ・ウィザード」なんて言われてるじいさんと格差がありすぎだと思わないか?  今ならじいさんはじいさんになるまで修行重ねて名声もあったからそんな風に言われてるんであって、ヒヨッコのオレと格差があるのは当たり前だってわかるんだけどさ。  まあ頭に卵のカラがついてるようなヒヨッコだったオレは、弟子入りして三日くらいで挫折しかけてたね。何度も何度も、同じ魔法書めくって同じ魔法使うっていう修行内容がひたすら地味でキツイってのは耐えられたんだけどさ、やっぱガキの頃って同じ年のガキとの人間関係が全てみたいなとこあるから、そっから浮いて笑いものにされるってのが結構きつかったんだわ。  じいさんもガキの失礼な弟子入り志願にずいぶん親身になってくれた方だけど、そっちの精神的なフォローはしなかったからな。多分そういう周囲から浮くってこと、成果が出るまで笑われるってのに耐えられるかどうかってのが魔法使いになる最低条件の一つだったんだろ。  そんな心が折れかけたオレの転機は、もうやめてやろうかなあ、って不貞腐れながら、相変わらず地面スレスレにしか浮かないホウキにまたがってた時だった。
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