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黒手《くろて》
「うちの地元に伝わる怪談噺に『黒手斬り』ってのがあるんだよね」
「へぇ~。めっちゃ怖そうだな」
「まぁね。すっげぇ~昔,黒手って妖怪がいてね。そいつは便所に入った女のケツを撫でるだけの妖怪なんだよ」
「お……おう……」
「で,ある日,笠松甚五兵衛の女房のケツを撫でたんだよ。そしたら怒った甚五兵衛に腕を斬り落とされてさぁ。後日,黒手が腕を取り返しにくるって話なんだ」
「お……おう……」
「な……。意味,わかんねぇだろ?」
「その話,どうゆうこと……?」
「俺もわかんねぇ……」
「お前の地元ってどこだっけ…?」
「石川県だけど……?」
「その後になんか,もうちょっと話が続くんじゃねぇの? 他の展開とかさぁ」
「さぁ……? 俺が知ってんのはこれだけ」
「その話……伝承して,なんか意味あんの?」
「いや,俺もよくわからないんだけど,子供の頃からよく聞かされてたってか,地元じゃ,ちょっと有名な話なんだよ」
「子供たちはそれ聞いてどうすんの?」
「なんだろうな……? 痴漢すると腕落とされるとか……旦那のいる女には気をつけろとか? 嫌がる女に手を出すなとか?」
「やべぇな! 石川県!」
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