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「あらあら、ごめんね。染みるわよねぇ」
真鍋はそう言いながらも全く消毒の手を緩めない。
傷口を抉られるような感覚に、優太は涙に濡れた目を横へと向けた。
傷口なんて見てられない。
こうして痛みに耐え、消毒が終わるのを待つのみだ。
プルプル震えながら耐えること数分。
「はい、いいわよ。怪我には気をつけてね」
真鍋の優しい声に目を開けると、傷口には大きめのテープが施されていた。
「あ、はい、気をつけます。…ありがとうございました」
治療が終わってホッとした優太は、お礼を言ってペコリと頭を下げた。
「甘凱くんも、ありがとうね」
真鍋の言葉を聞いて、そこでハッと思い出した。
甘凱が居たのだ。
優太は、ここまで連れてきてくれた一応お礼を言おうと甘凱を振り返った。
「甘、っ?!!」
甘凱は笑いを我慢したバカにしている表情を浮かべてあらぬ方向を見ていたのだった。
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