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エグエグと泣く優太を観察していた甘凱は、それから暫くすると顎を解放した。
優太はすっかり気落ちしており、そのままペチャンとその場に座り込んでしまった。
足の痛みが増していたが、そんな事が気にならない程に甘凱の恐ろしさが全身を支配していた。
急にどうして?という思いと、力では敵わない恐ろしさ。
頭の中は混乱していて、廊下に落とした視線を上げる勇気が無かった。
そんな優太を許さない声が降ってきた。
「おい、顔上げろ」
ドキッと心配が音を立てた。
「こっち見ろっつてんの」
そんな甘凱の言葉に従いたくは無い。
従いたくは無かったけれど、そんな抵抗をみせられるほど今の優太は心が強くない。
オドオドと顔をゆっくりと上げると、目の前には先程とは違い甘凱の笑みを湛えた顔があった。
イケメンというのは、こんな顔さえイケメンなんだな…。
なんて思考を混乱させながら、優太は涙に濡れてグチャグチャの顔を甘凱へ向けていた。
「なんかお前…。やっぱり、いいな」
甘凱が微笑みながらそう言った。
何がどういいのか?
目をパチパチッと瞬かせた優太は、情けない顔で甘凱の顔を見つめた。
けれど、男の意図するところは一切分からない。
叱られた犬の様に様子を伺う優太を見ながら、甘凱は腕を組んで片手を自分の顎に添わせた。
「う~ん。何でだろ?」
なんて首を傾げる。
それはこっちのセリフだ。
とは言えない臆病な優太だった。
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