256人が本棚に入れています
本棚に追加
「もう授業は始まってるんだぞ!!」
男性教師が眉間に皺を寄せながら近づいてくると、すかさず甘凱が立ち上がり紙を取り出した。
「先生、これ。サボりじゃないですよ?」
軽い口調で言いながら、紙を渡す。
「あぁ、大変だったな甘凱。ありがとうな」
保健室利用の内容が記された紙に目を通した教師が、甘凱に笑顔で礼を述べる。
優太の記憶では、この教師とは一、二年生の今まで授業で関わる事はなかった。
なのに相手は甘凱を知っていた。
何処かで接点があったのか、それがなくとも甘凱は校内でも有名だから教師全員が知っていてもおかしくはない。
とにかく教師のお陰でなんとかこの雰囲気を断てる、と優太は内心ホッとしていた。
「おい、怪我は大丈夫なのか?」
漸く優太の存在に気がついた教師が、声を掛けてくれた。
「え、あ、は、はい…」
本当のところ傷口と頭部が痛むのだが、それをわざわざ今この教師に言う必要もないだろう。
吃りながらなんとか答えた。
「それにしても座り込んで、立てないのか?」
廊下に座り込んでいる優太に教師がすごく心配そうに近づいてきた。
「先生、大丈夫ですよ。俺がこれからついでに教室まで連れて行くんで」
「おお、そうか。悪いが頼んだぞ甘凱」
「了解で~す」
軽い口調で返答した甘凱に教師は手を上げると、用があったのかそのまま廊下の突き当たりを曲がって行ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!