2話

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 ショーで、男はいつもジャグリングをした。だからジャグラーと呼ばれていた。  白いタイルの壁に投じられた影。くるくると宙を飛び交う球状の物体と、それらを操る矮躯が踊っている。矮躯の曲芸師によるジャグリングはかれこれ半時間は続いていた。  ここはシティ・オブ・ロンドンの一隅を占める高層ビル〈サンセットスクエア〉、その四十四階。  ジャグラーのいる部屋は広く薄暗い。金で縁取られたキャビネット、ワインボトルの並ぶバーカウンター、黒革張りのスツールなど、随所に置かれたランプが申し訳程度の仄赤い光を灯すのみだ。  ジャグラーには取り巻きの女が二人いる。それぞれ赤髪と青髪の彼女たちはたいていジャグラーのそばにいて、基本的に何もしない。今はジャグラーの客の醜態を嘲るように眺めている。 「早く警察と報道陣をどかせ! 俺が捕まるかもしれんのだぞ!」客はジャグラーがジャグリングを始めたのと同刻頃から、口角泡を飛ばして電話口に喚いていた。「わかるか? 知らぬ存ぜぬで押し通せるのはもって三日だ。下に集まっているゴミどもの口は塞げんのだぞ! わかったら切れるカードは全て切れ!」     
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