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部屋の主であり、ジャグラーの顧客であるヘイスティングス社長は激昂していた。
「警察に貸しがあったろう……もう観念しろだと? ふざけるな! あっ」一方的に通話を切られた端末を、忘我の目で見つめる。「らあああぁぁぁぁあっ! 畜生!」マホガニーの椅子にぶち当たった端末が砕け散る。
嘲笑があった。
顔に憤怒に染めた社長の後方から届いた声は、粘りつくように不快だった。社長は憤然として振り返った。
「何がおかしい!」
「だって笑い話だろ」粘りつく声色はそのままに、ジャグラーはぴたりとジャグリングをやめた。宙を踊っていた物体が次々と落下し、鈍い音が連続して床を打った。
「面白い話を聞いてくれ。あるところに野心家の社長がいました。社長にはかねてからの商売敵が何人もいました。そこで暗殺者を雇って商売敵を殺すことにしました。でもただ殺すんじゃ面白くない。十年も二十年も憎み合ってきた間柄だからな。社長は思いつきました。商売敵のみんなを集めて首切りショーを開催しよう。ついでに秘蔵のワインも開けよう」
社長は思わずローテーブル上のグラスに目を落とした。まだ飲みかけだった。
「社長は今日この時のために手間暇をかけて、慎重に慎重~に事を運んだのですが……」
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