Episodio due Mondo della morte

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「何でもない。その、黒い蟷螂(かまきり)が」 「蟷螂(かまきり)ですか?」  クリスティーナが不安げに周りを見回した。虫が苦手なのだ。  いや蜘蛛(くも)か、とアルフレードは思った。  ベルガモットは腕を組み、不機嫌そうに目を細めてアルフレードを見た。 「主を蟷螂(かまきり)扱いとは、大したもんだの。今すぐ頭からバリバリ食われたいか」 「……クリスティーナ、少し、待っていてくれるか」  アルフレードは、ベルガモットの手を引いて屋内に入った。  扉の開け放たれた小部屋の壁に隠れるように立つと、手を放した。  「許可も得ず主の手を引くとは無礼な」  ベルガモットは、両手の黒いレースの手袋をかけ直した。 「あの場で、来てくれと声を掛ける訳にもいかんだろう」 「来てくれ? 主に対する言葉は 、“ 恐れ入りますがこちらへお越しください ” だ」 「ああ、何であんな所に現れているんだ君は」  アルフレードは米噛みを抑えた。 「用があれば、呼ぶと言ったであろう」  来い、とベルガモットは言って、促すように手を振った。  アルフレードの都合など一切関係ないという様子だ。 「重要な用事なのか?」  アルフレードは腕を組み言った。 「なぜお前がそれを問題にする」  ベルガモットは言った。 「今、許嫁と会っている最中なんだが」 「それはわたしも気を使ったつもりだ」  ベルガモットは開け放たれた扉から、クリスティーナのいる方向を伺った。 「あの女と話してても、さぞかしつまらんだろうと思ってな」  わざわざ用事を作ってやった、とベルガモットは続けた。 「別につまらなくはない」  アルフレードは不愉快な表情で目を眇めた。  ほお、とベルガモットは言って、もう一度クリスティーナのいる方を見た。 「乳母に躾けられた言動だけをして、二言目には神様で全て済ます女は面白いか?」 「面白いも何も、女性というのはそういうものだろう。君も見習ってあのくらい男を立ててみたらどうだ」  ベルガモットは怪訝そうな表情で、アルフレードの顔をじっと見上げた。 「それは何の漫談だ」 「なぜ漫談に聞こえるんだ」
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