Episodio due Mondo della morte

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「なるほど。お前も冗談を言うことがあるということか」  ベルガモットは見上げるのをやめ、黒髪をさらりと揺らした。 「センスは無いが、主を楽しませようとした心がけは誉めてつかわす」  皮肉を言っているのか、それとも本気でどこかずれているのか。  アルフレードは、呆然と絹糸のような黒髪を見下ろした。 「ほら、行くぞ」  ベルガモットは鎖を引く仕草をした。 「待て。クリスティーナにひとこと言うくらいの時間は取れないのか」 「仕方ないのう。早く行って、つまらないからさっさと帰れと言って来い」 「そんなこと言う訳がないだろう」  アルフレードは腕を組み、我儘な死の精霊を見下ろした。  ベルガモットに連れられて来たのは、暗い森のような場所だった。  月も星もない暗い空は、薄い雲がゆっくりと渦巻き、所々に漆黒の部分と薄墨色の部分のマーブル模様を作っていた。  辺りは静かで、音というものが存在しないのかと思うくらだ。  森というには木々や葉の香りはなく、土の匂いもない。  無臭の森というのは、ここまで違和感のあるものかと驚いた。  屋敷の中庭から、一瞬にしてこの世界に来た。  アルフレードにとっては、巨大な手品の仕掛けでも見せられているような気分だ。 「これは……どんな理屈でここに一瞬で入れるんだ」  アルフレードは周りを見回した。  声を発して始めて、音がきちんとある世界なのだと認識してホッとする。 「お前に、(いにしえ)の世界の成り立ちを言っても納得は出来んだろうし、粒子だの帯びた電子がどうだの言ってもどうせ分からんだろう」 「は?」 「いい。魔法か何かだと思っておけ」  ベルガモットは振り向きもせず言った。 「ここはどこだ」  アルフレードは言った。 「あの世とこの世の狭間だ」 「煉獄か?」 「好きなように呼んだらいい」  時おり木々が揺れるが風はない。  地上の自然現象を、何者かが上っ面だけ真似ているような妙な感じだ。  暖かくもなく寒くもない。  空が暗い割に、辺りを見渡すには支障のない明るさであったが、光源がどこなのかよく分からない。   前方に、巨大な城のシルエットが現れた。
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