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鎧の水晶
真冬、寒風吹き荒れる中、定岡真由子はやつれた顔で占い師を訪ねた。二十代半ばを少し過ぎた彼女は、店の前で大きくため息をつきつつドアを開けた・・・
「対人関係に悩んでいるんです」
「どんな風に?」
「人と付き合うのは嫌いじゃないんです。でも何と言うか、親友や恋人、自分に深く踏み込んでくる関係が嫌なんです」
「なるほど、それが重荷になった経験があるのかしら」
真由子はうなだれた。
「今の私としては、他人との深い関りは出来るだけ避けたいんですけど、気の合った人と話すのは好きだし、根は寂しがり屋だから」
「板挟みの状況にあるわけね」
占い師は、カードを切り始めた。濃い紫色の布がかけられた円形のテーブルにカードを並べる。一枚一枚ゆっくりと捲る。
「うーん、悪いけどあなたのような悩みには具体的な解決法がないのよ。占いは元々、黒か白かはっきりさせたい相談に応えるものだから。自分に負担をかけないために、どう人間関係を築けばいいかは助言できるのだけど」
「教えてください」
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