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その事を察したサクヤは、自身の愛称の由来を高くも低くも無いが通った声ではっきりと伝えた。
「今着ているこの衣装も我々が祭事で身につけるドレスのデザインを流用しつつ、上着の形や柄は東方の国の衣装を模してます」
さらにサクヤはスノーフィリアが気になっているであろう、自身が身につけているドレスに関しても同様の口調で答えた。
「とても素敵です」
サクヤの”スノーフィリアが姫だから特別媚びるわけでも、知識をひけらかし優位に立つために威張るわけでもない対応”に、とても好感を抱いてしまう。
「王女殿下にそのようなお言葉をかけていただき、とても嬉しく存じます」
サクヤはそんなスノーフィリアの満足した様子を確認すると、笑顔でスカートを軽くたくし上げて会釈し、真っ直ぐに整った横髪が僅かに揺れる程度の速さで、向きを変えて去っていった。
「あんな綺麗な人が居たなんて……」
「姫は彼女の事が気に入ったようですな。今度我々の家に招いてみてはいかがでしょう?」
「ええ、そうですね。来てくれるとよいのですが」
ほんの少し言葉を交わしただけだった。
話した内容もごく平凡だった。
それでもサクヤの印象は強く、彼女の凛とした態度が心地よい余韻として頭の中から離れずにいた。
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