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「私には何も解りません。……ですがこの婚約の儀が始まる直前、陛下直々に有事の際はスノーフィリア様を優先してお守りしろとの勅命を受けておりました。申し訳ございません。私が非力な故に陛下まではお救いする事が出来ませんでした」
ルリフィーネは悲しげな表情をしながら、自身が知りうる情報を主君へ簡潔に伝えつつ頭を深々と下げて陳謝する。
今回の急に起きた出来事は”結局誰も何も知らず、解らない不慮の事象”であると悟ったスノーフィリアは、今にも大声で泣き出しそうになってしまう。
「今はまだ大丈夫ですが、いずれここも危険となるでしょう。門を出たところで馬車を用意しておりますので、どうかお乗り下さい」
そんなスノーフィリアをなだめつつも、ルリフィーネは半ば無理やり姫君の手首を握りながら門まで走る。
門から出てすぐの道にはルリフィーネが説明した通り、馬車が待機していた。
ルリフィーネは多少強引にスノーフィリアを馬車へ乗せると、御者の方を見て目で合図し姫君が乗った事を伝える。
「ルリ……、あなたは一緒に来てくれないの?」
「私は姫様の専属使用人、ですが同時に宮殿のハウスキーパーとしての責務も負っております。申し訳ございません、共には行けません……」
「ねえルリ、どうしてそんな顔を――」
ルリフィーネは首を横に二度ほどゆっくり振りながら一緒に行けない事を残念そうに伝えると、決意の眼差しをスノーフィリアの方に向ける。
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