130人が本棚に入れています
本棚に追加
/1043ページ
2. 雪解けて雫となり、姫は新たな生の祝福を受ける
夜の闇を馬車が走る。
王宮から逃げ出した傷心の姫君を乗せて荒野を、林道を、古戦場を駆け抜けてゆく。
この夜の暗黒以上に暗く苛烈で過酷な運命が降りかかる事を、少女はまだ知らない。
何故お父様とお母様があんな目にあってしまったの?
どうして祝いの席であんな事件がおきてしまったの?
私は、……誰かに怨まれるような事をしたのかな?
……私が、悪いの?
これからの行く末も何も解らない幼き姫君スノーフィリアは、様々な負の感情を抱きながら、膝を抱えてうずくまったまま体を震わせ泣いていた。
ごく普通の子供ならば、すっかり夢の中へ入っていてもおかしくない時間ではあったが、それでも眠ることが出来ずにいたのは、眠ってしまえば父親と母親が殺される光景を思い出してしまうからだった。
彼女の現在の心の内を現すかのように整っていた髪形は乱れ、薄くしていた化粧は泣いたせいですっかりとれてしまい、着ている花嫁衣裳のトレーンは死線をかいくぐったせいか汚れてくしゃくしゃのしわしわになっている。
「到着しました。こちらへ」
私はこのままどうなってしまうの?
この馬車はどこに着いたの?
お父様、お母様、ルリ……。
最初のコメントを投稿しよう!