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彼女の現在の悲しみが未来の不安へと変化しかけた時、馬車が止まり御者が扉を開ける。
どこかやつれた御者の表情が、スノーフィリアに漠然とではあるが暗い印象を与えてしまうが、その表情の真意までは理解出来なかった。
「あの、ここはどこなのですか?」
「水神の国の南方にある山岳地帯、コンフィ公爵の別邸です」
スノーフィリアはやつれた御者に今自分が居る場所を聞き、そして答えを知り、今まで悲しみ一色だった表情に僅かだが明るさが戻る。
「この子が連絡のあった少女ですか?」
「ええ、それでは後はよろしくお願いします」
「解りました。ご苦労様です」
しかしスノーフィリアのそんな心境の変化に気づかないのか、敢えて無視をしているのか。
やつれた御者は表情をまるで変えず、邸宅の前で待っていた釣り目の女使用人へ、無機質に淡々と話をすすめている。
「あ、あの……」
「旦那様がお待ちしております。付いて来て下さい」
連絡があったという事は、予めこちらに来るよう決められていたというの?
この事態に対して私を馬車で逃がし、別邸に匿うまで考えていたとは見事な手際としか思えないけれども……。
何かが引っかかるような。
そう思ったスノーフィリアは、御者とのやりとりの意味を女使用人に聞こうとする。
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