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しかし女使用人は姫君の話を一切聞かず、冷徹に淡々と屋敷の扉を開けて奥へと誘う。
スノーフィリアはそんな態度に多少の不満と憤りを感じながらも、このまま外に居ても仕方ないと判断して屋敷内へと入り、後に付いて行った。
「こちらの部屋へお入り下さい」
屋敷のエントランスを抜け、階段を昇り、著名な作家が書いた絵画が飾られている廊下を抜けてゆくと、女使用人は部屋の扉をゆっくりと音をたてないように開けていく。
スノーフィリアは恐る恐るその部屋に入ると、自らが永遠を誓おうとした相手が座りながら本を読んでいた。
「コンフィ公! ご無事でしたのね!」
「スノーフィリア”殿”も、よくご無事でしたな」
コンフィは読書を中断して手にあった本を机の上へ置くと、スノーフィリアの方へ視線を向ける。
「ああ、良かったですわ……」
あの騒動の中をよく無事にきり抜けることが出来た、本当に良かった。
夫のコンフィ公もきっと私の事を心配し、私の無事を知ったときに同じ温かい気持ちになったであろう。
スノーフィリアはそう確信し、疑いの余地すら無かった。
しかし、そんな喜ばしい事実に直面したであろうコンフィ公の表情は一向に緩まず、ずっと厳しい眼差しを王宮から逃げてきた少女に向けている。
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