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「だから幼子と呼ばれるのだ。……もっとも、今まで外の世界を知らないお姫様では解らぬのも当然か」
スノーフィリアの砂糖よりも甘くて幼い世間知らずな感情と考えは、老いた公爵の炭よりも苦い言葉によって打ちのめされてしまう。
辛い現実を知った小さな姫はその場で崩れてしまい、ただひたすらに声を上げ涙を流して泣きじゃくった。
「だが、一つだけ君にとって良い知らせがある」
コンフィは淡々と話し続ける。
「このまま君をこの屋敷から追い出すのは容易だが、道徳的にそれはしたくない。そもそもこのあたりは木々が鬱蒼としている山岳地帯だからな、何の備えもせず出て行けば野生動物にやられてしまう、少女の命を無碍にしたとなれば我が家門に傷がつくのは必至だ」
……私は姫。
そうだ私は姫だ。
みんなが私の事を良くしてくれた、みんな私が姫だって認めてくれた。
なのに……。
それなのに!
「だからここで使用人として働かせることにした」
その言葉を聞いた瞬間、スノーフィリアは大きく目を見開いてしまう。
それと同時にコンフィは机の上にあった呼び鈴を鳴らすと、大した時間も空かずに先程スノーフィリアをここまで連れてきた、釣り目の女使用人が現れる。
「お呼びでしょうか。旦那様」
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