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王族に手をあげるなんて何人たりとも許されるわけがない。
少なくとも、スノーフィリアはそう思っていたしそうあるべきと信じて疑わなかった。
だが去り際にこの非常識な状況を見ていたコンフィ公爵は、この行為を一切全くこれっぽっちも否定しようとしなかったのだ。
「いつまで座っているの? 付いてきなさい、少しでも遅れたらまた叩くけれどもいいの?」
叩かれた事による頬の痛みと、こんな不遇な境遇に落ちてしまった現実を受け入れなければならない苦痛と、自身を否定された事による心の痛み、それら三つの苦痛に対して、スノーフィリアはただ歯を食いしばり床に敷かれた絨毯を強く握る事しか出来ずにいた。
「あぅっ!」
「聞えないの? さあ早く立ちなさい!」
女使用人は、立つことをしなかったスノーフィリアの頭を勢いよく叩き、その手で伏せったままの少女の髪を鷲掴みにして持ち上げる。
髪が引っ張られる事で頭部に激痛が走って痛みに堪えきれずたまらなく立つと、女使用人は言う事を聞かない少女を見下したまま手を離して、部屋を出て行った。
館の中を仕方なく付いていく。
女使用人とスノーフィリアの二人の足音しか無い。
夜で他の人達は寝静まっているせいか、別邸だからそもそも人が少ないせいか。
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