48. 転機は急に訪れて

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「スノーフィリア王女殿下が崩御されていない事は審問官の一件で解っておりました。ですが確固たる証拠もありませんでしたし、そもそも王女殿下の命を奪うなんて口にも出せません。……何かの間違いでしょうか?」  それでもユキはブカレスに確認をしたが、彼が嘘をついたり誤魔化したりしているとも思えないので、ユキはブカレスの言葉を信じる事にした。 「あなた方の噂は、かねがね聞いておりました。組織に対抗する一団、新世界と自称しているそうですね」 「そんな事も知っているなんて、流石は正教の情報網かしら?」 「ええ。正教は情勢の把握をする為、独自の情報網を使って各国の動向を調査しております」  まさか新世界の事まで知っているなんて。  流石は世界で最も布教しており、信者の数も一番多いであろう宗教なだけはある。  規模だけならば、どんな集団よりも大きいかもしれない。 「正教は基本的に中立であり、どの国に対しても平等に接する方針です。手に入れた情報はあくまで正教内での使用を目的として、他の者が不利益がこうむるような事はしておりません。ですが、秘密結社トリニティ・アークの動きが最近活発なのも事実」  ブカレスは笑顔のまま淡々と正教の立ち位置について語る。  決して声を荒げず、物静かで落ち着いているが、妙な説得力とリアリティがあるのはやはりこの人だから成せる技なのだろう。     
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