1. 始まりは、地に落ちた雪のように

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 主役である姫に呼び出され、会話をしていた時以外はサクヤの事を見ている者など誰もいなかった。  事実、他の貴族や著名人は皆スノーフィリアに注目しつつ、他の参加者との親睦を深めている。  しかし花嫁本人が、かつて小国を統治していた一族とはいえ、いち参加者でしかないサクヤの方を気にしているのである。  そんなスノーフィリアの思いを察した新郎のコンフィ公爵は、なにも言わずに小さな子供をなだめるような笑顔を見せるだけだった。  スノーフィリアとサクヤの出会いから間も無く、主賓席で待っていた国王が立ち上がる。 「此度は、わが娘スノーフィリアの婚約の儀に参列していただき誠に感謝する。諸侯らには、娘の新たな門出を祝福していただきたい」  ざわついていた会場は咳払いやくしゃみをするのも申し訳ない程静かになり、全員が国王の方へと体を向けて直々の挨拶に耳を傾ける。 「では乾杯の……」  簡易な作りだが紛れも無く一級品であろう乳白色の杯を高らかに持ち上げ、国王が娘の第二の人生を祝福しようとしたその時――。
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