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火薬の爆ぜる甲高い音と同時に、スノーフィリアの父親である水神の国の王の、シルクの白いケープが真っ赤に染まる。
彼は白目をむいて無言のまま祝杯を落とすと、膝から崩れ落ちて動かなくなってしまった。
「キャアアアアアア!!!」
祭事の参加者の一人の叫び声を上げると同時に、入り口や窓からは次々と黒いフードとマスクで目以外の全てを覆った明らかに怪しい人々が入ってきて、手に持った短剣で次々と参加者の急所を突いてゆく。
その瞬間から花婿と花嫁の祝いの場は、恐怖と悲鳴、死と血が支配する地獄と化した。
「お父様!」
会場内に居た貴族達が狼狽しながらこの場を無秩序に逃げようとしている最中、スノーフィリアは人ごみをかきわけながらも倒れた父親のもとへ行こうと試みる。
「な、何者……?」
しかし、父を思う健気な王女の前には、無情な現実が立ち塞がってしまう。
王女は立ち向かう術を知らず、また立ち向かおうとする勇気も無く、ただ戸惑うだけだった。
そんな王女を嘲笑うかのように、貴族達を片っ端から殺害しているであろう黒フード男の血の赤に染まった刃が、スノーフィリアの体を貫こうとしてきたその時。
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