1. 始まりは、地に落ちた雪のように

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「スノーフィリア、逃げなさい!」 「お母様!」  水上の国の王妃が、スノーフィリアと黒フード男の間に飛びこむ。  彼女の身を挺した行動により、短い人生に幕が下りることは無かった。  だが代償として体に刃を突きたてられてしまった母親が、悲痛な声を僅かに出した後に黒フード男へしがみつきながら力果ててしまう。 「お父様……、お母様……、あ……、ああ……」  父親と母親が目の前で死んでゆく光景は、年端もいかない少女にとってあまりにも残酷で、そして彼女を戦慄させるには十分すぎるほどだった。  スノーフィリアは自らでも気がつかないうちにその場で腰を抜かし、口元を震わせて大きな青色の瞳に涙をいっぱい溜めながら、花嫁衣裳のスカートと穿いていた下着を自らの小水で濡らしてしまう。 「スノーフィリア様、こちらへ」  彼女が受けた衝撃は計り知れない程大きいせいか、日ごろからスノーフィリアの世話をしている、教師であり相談役でもあり最大の友でもある、宮廷のハウスキーパーのルリフィーネの言葉もすぐには届かない。 「……仕方ありません、今はこの場から逃げる事が先決。急場にて少々手荒くなります。罰は後ほど受けますので……失礼!」     
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