1. 始まりは、地に落ちた雪のように

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1. 始まりは、地に落ちた雪のように

 漆黒の空に月と星がまるで競い合いながら燦爛と輝く夜、少女の新たな人生が始まる……。  ここは世界を四分割する大国の一つ、水神の国。  その中枢である首都アウローラ、王宮内の迎賓館。  そこでは、王女であるスノーフィリアが今まさに結婚しようとしていた。 「スノーフィリア王女殿下、およびのコンフィ公爵のご来場!」  一人の兵士の通った声が館内に響くと、今回の祭事に招かれた王族、上級貴族、有名芸術家、他国内外問わず一流と称される人々が、水流の模様が彫られた白磁の扉の方を向く。 「おお、これは美しい……」 「さすがは国石である雪宝石に喩えられるだけのお方。実に素晴らしい」  間も無くして扉が悠然かつ仰々しい音をたてながら開いてゆくと、燕尾状に広がっている金縁の刺繍が施された白いマントを羽織り、同様の加工がされたジャケットとズボンを着こなした紳士と、ノースリーブで胸から切り返されているプリンセスラインのウェディングドレスを身に纏い、みつあみを月桂樹の冠をかぶる女神のように結った少女が、手を取り合いながら館内の赤いカーペットの上をゆっくり歩いてゆく。     
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