1. 始まりは、地に落ちた雪のように

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 召使いは何も言わず頭を軽く下げると、スノーフィリアが気になった少女のもとへ向かい、彼女を呼んだ。 「お初にお目にかかります王女殿下。私はブロッサム家当主です。サクヤとお呼びくださいませ」  水神の国は元々単一国家ではない。  かつて世界を襲った大洪水から人類を救うべく箱舟を建造したノア一族を核とし、他の小国や集落を併合して出来た国である。  ブロッサム家もそんな”併合された国”の一つであり、かつて花の国と呼ばれていた国家を統治していた女王の一族であった。  女系家族であり、その容姿の美しさから併合と同時にノア一族の遠縁の家に嫁いだが、家の当主が不慮の事故に見舞われて命を落としまい、以降その家の資産と領地を受け継いでいる。  若くして未亡人となったサクヤは旧姓であるブロッサムの名前を復活させ、そして現在に至るというわけだ。 「サクヤ……?」  サクヤと自称する少女の家柄は、国の歴史を勉強していく過程で知っていた。  しかし、彼女の本名はチェリーのはずなのに、何故サクヤと自称しているのかが解らなかったスノーフィリアは、不思議そうな顔で彼女を見た。 「はい。ここより遥か東方にある島国では、私の名前にまつわる神がいるらしく、その名を借りております」     
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