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03 スウィンギン・キャラバン
あまりに一瞬の出来事に、何が起きたのか直ぐには理解できなかった。
「……ッ!」
叫び声を押し込み、どうすべきなのか脳をフル回転させる。
――が、思考が追いつかない。
前面に浮かぶコンタクト画面で、メメンプーの様子を確認する。
目を見開いて固まっていた。
「ライトを消せ!」
俺の言葉でようやく我に返ったのか、メメンプーがライトを消した。
「ガガンバ! 下をくぐるぞ!」
何故、後方撤退ではなく「下」なのか一瞬戸惑ったが、ケントの話を思い出して納得する。
何故かヤツラ――巨大生物は、コロニーの管轄区域に入って来られない。
コロニーが近い場合は、一刻も早く管轄区域に入ってしまうのが一番の安全策だと言っていた。
つまり、メメンプーは下からくぐって前方にある管轄区域の扉の前まで通り抜ける算段なのだ。
メメンプーの叫び声を聞いた俺は、宙に浮かぶパネルを操作。
削岩アームを下に向け、振動パルスを全開に開いた。
地面の岩が一瞬で砂に変わり、真下に円形の大きな穴が空く。
崩れていく地面の音を聞きながら顔を上げると、巨大なくちばしが、獲物を探るように岩を掻きまわしていた。
直径五メートルはある洞窟を狭そうに掻きまわす「くちばし」――その長さから想像するに、本体は最低でも十メートルはある中型~大型のタイプか。
全体像が見えないだけまだマシだが、ぎっしり並んだ針状の歯、たれるよだれは気持ちが悪い。
メメンプーの指示通り、下方向にはもう一つ道があって、穴の下には着地点が見えた。
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